かつての日本では、しじみはもっとも身近な養生食でした。

昭和40年代ごろまでは、日常的にしじみを食べていた家庭が多いのではないでしょうか。
店で買うというよりも、近くの川で採って食べるものだったかもしれません。

身近なお年寄りや大人から「元気のない人にしじみ」「顔色の悪い人にしじみ」「女の人にしじみ」などと聞かされ、体によい食べものだということを誰もが認識していたように思います。

古くは江戸時代の庶民にとっても、しじみは身近な養生食でした。
医者や薬にはなかなか手が届かない時代ですから、食養生や民間療法にとても熱心だったというわけです。

しじみが毎日の健康に役立てられていたことは、納豆としじみに朝寝起こされる、金色の男しじみに食い飽きるという川柳からもわかります。

大酒飲みのお父さんの滋養食として、成長期の子どもの貴重なタンパク源として、お母さんにとっては乳の出がよくなる食べものとして、小さな身も残すことなく食べていたそうです。

病院や薬を手軽に利用できるようになった今、私たちは江戸の人たちよりも元気だといえるでしょうか。

酒の肴に、産後の女性に台湾では、今でも日常的にしじみが食べられています。

日本と同じく、占くからしじみを養生食としてきた台湾では、今でもしじみに関する食の知恵が親から子へと言い伝えられています。

黄金しじみの産地として知られる花蓮のご家庭を訪ねると、「食欲がないときにはしじみスーブを飲むとよい」「産前産後の女性はしじみを食べるとよい」
といったことを、ご夫婦が教えてくださいました。

しじみを使った家庭料理を作っていただいたところ、醤油漬け・妙めもの・スープ・団子と、たちまちテーブルがいっぱいに。
日本では、こうはいきません。

台北の薬膳専門店では、しじみという食材の効能を詳しく教えていただきました。
花蓮のご夫婦の話を裏付けるような内容でした。

また、作っていただいた黄金しじみ料理は、薬膳のイメージをくつがえすおいしさで、しじみの滋味が身体に染み人る感じさえしました。
私たちも、こうしたしじみ料理が手軽に食べられたら、どれほど体によいかと思いますが、お料理する手間や、安全で質のよい材料を手に入れることを考えると、日本ではやはり難しいことかもしれません。